2013年5月2日木曜日

『白鯨』と「熊」

つねに何冊かの本を同時並行で読んでいるのですが、
昨日は長らく熟読していたメルヴィルの『白鯨(モービィ・ディック)』(1851)を、
今日はフォークナーの「熊」(1942)を、立て続けに読み終えました。

ふたつの小説は書かれ方も規模もまったく違うとはいえ、どちらも、
「この作家はなぜこれを書こうとするのか、書いてしまうのか」という謎(というか
疑念というか)を読み手に抱かせ、その謎にこちらも惹きこまれてしまうという
ところは似ているような気がします。

書かれ方が違うといっても、それぞれ、巨大な鯨をしとめることへの執着、
巨大な熊を狩ることへの熱を描いているのだから、ともにハンターの小説であり
日本にはあまりない、アメリカらしい小説ということもできます。

『白鯨』は置いておいて「熊」についていえば、この中編における獣(熊、
犬、鹿)の描写は圧倒的な迫力があります。
力強いとか、猛々しいとかいうことでなく、その寡黙さや無関心を含め、
ただずまいや動きの書かれ方に凄みがある。
そして、決して獣対人間とか、ましてや擬人化された獣とかいう描き方は
ありえず、自然(森)の一部としての獣なのであり、人もまた同等に
そうなのです。
時に人は、獣の動きを模倣しているかのように描かれます。

これは秋にやる授業で、獣をテーマにした小説のひとつとして読むつもり
なのですが、あらためていいのを選んだなあと自分のラインナップに
惚れ惚れ。
これを古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』などと一緒に
やるんですよ。
がんばろう。

2 件のコメント:

  1. いいね、いいね! 「熊」はフォークナーの最高傑作です。どっかで「コロンブスの犬」にもふれてちょーだい。小説じゃないけど、ないともいいきれない(というか単行本と文庫がまったくちがう本だということに誰も気づいてないのが悲しい)。では京都で、近いうちに!

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  2. わかりました! 「コロンブスの犬」、再読します。
    今日、大学に「銀河鉄道の夜」のフライヤーとポスターが山ほど届きました。通信部でも通学部でも配りまくりますよ! 心斎橋のほうも申込みました。

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