2014年9月17日水曜日

シモーヌ・シュヴァルツ=バルトをめぐって


今週末、立命館大学にて発表予定です。
 
2014年度 立命館大学国際言語文化研究所・研究所重点研究プロジェクト
「環カリブ地域における言語横断的な文化/文学の研究」

2014921日(日) 14001730 

立命館大学 衣笠キャンパス 末川記念会館 第3会議室

「英語・スペイン語・フランス語・オランダ語、さらにはクレオール系諸語の壁をまたいで」

講師:

1) 久野 量一 (東京外国語大学)

 「環カリブの文学は何語で書かれているか?――非英語圏カリブ作家と英語について」

2) 西 成彦 (立命館大学)

 「コロンブス暦「第六世紀」の「アメリカ大陸文学」と「五つの大きな舌」――オランダ領アンチルの位置」

3) 中村 隆之 (大東文化大学)

 「ランガージュと潜在するもの:エドゥアール・グリッサンの詩学を印す一つの踏み跡として」

4) 大辻 都 (京都造形芸術大学)

 「シモーヌ・シュヴァルツ=バ ルト『ティジャン・ロリゾン』をめぐって――クレオール・コントとフランス語小説のはざま」

司会: 西 成彦 (立命館大学)

 

2014年9月5日金曜日

李良枝「由熙」


読書会で李良枝の「由熙(ユヒ)」を選んだのは、中上健次やリービ英雄があれほど絶賛するのだから読まなくてはと思いながらきっかけがないまま20年以上が経ってしまったので、無理やりこの機会に学生も巻き込んでという職権乱用行為によるものですが、並行して私の頭のなかには、同じようにふたつの言語の葛藤そのものが作品化されているシモーヌ・シュヴァルツ=バルトのテキストのことがありました。

それで「由熙」を読んでみると、祖国でアイデンティティを確認したいのにそうできない主人公の切実な痛みがドラマとしてより母語と日本語の間という言語の問題を通して描かれている、その描かれ方・筆致がすばらしく、なんでこんなにかんたんに読めるのに――少なくともシュヴァルツ=バルトの禅問答のようなフランス語小説より――今まで読まなかったのだろうと後悔すると同時に、この小説の構図って、シュヴァルツ=バルトというよりも、さんざん論じてきたマリーズ・コンデの『ヘレマコノン』と完全に同じだなということに今さらながら気づいたのです。

そしてついでに、さっき読んだ中上健次の「輪舞する。ソウル」では、ボブ・マーリーの訃報をソウルで聞いた中上とまだデビュー前の李良枝が「追悼だ!」といってタコを食べさせる店に飲みに出かけ、支払請求が「8千ウォン」なのに「追悼だから5千ウォンだ」と勝手に値切り、雨に濡れながら「エクソダス」を歌うという展開に感銘を受け、ここで韓国とカリブ海とがみごとにつながりました。