2013年4月7日日曜日

ダニー・ラフェリエール書評

『すばる』5月号で以下の書評をしています。

「すけこましニグロの見出された軽さ」
ダニー・ラフェリエール『ニグロと疲れないでセックスする方法』(立花英裕訳、藤原書店)

ラフェリエールはカリブ海ハイチ生まれ。
70年代にモントリオールへ亡命し、85年、本書でデビューした作家です。

買うのも人前で読むのも、なかなか勇気のいる本ではありますが、れっきとした文芸書。
ジャズが響く多文化都市モントリオールの片隅でくり広げられるニグロ青年の日常から
80年代特有の空気が伝わってきます。

先に訳された『ハイチ震災日記』『帰還の謎』(メディシス賞受賞)以来の書評でした。
(前は『図書新聞』に掲載してもらいました)
よろしければご笑覧ください。

2013年4月4日木曜日

新じゃがの男気風

新学期、今年度スタートした新学科の仕事が押し寄せ、レシーブを返しても返しても
次の球が飛んできますが、合間に美味しいものを食べ、英気を養っておきたい。

この春は、去年できなかった京たけのこ三昧をするつもりですが、大学近くに
トラックで売りに来る農家のおじさん曰く、「地元のは4月20日頃から」とのこと。
なので今は新じゃがです。

新じゃがの煮っころがし、世に普及するレシピを見ると、だいたい少量の出汁に
しょうゆと砂糖を大さじ1~2というような、お上品なものですが、私はもっと
がつんと男気のあるものを作りたい。
煮っころがしはそのほうがぜったいに美味しいです。

まずは、小さめの新じゃがをたわしでこすり洗います。
フライパンに多めの油を入れたら、皮に軽い焦げ目がつき、中味のほくほく感が
手に伝わってくるまで、炒め揚げのようにします。
余分な油を切って、日本酒をじゃーっと大胆に回し入れ、さらに砂糖大さじ4、
しょうゆを大さじ5。
で、しばらくぐつぐつ煮詰めてできあがり。

調味料のこの大胆さが、こってりした美味しさの決め手。
水はまったく入れません。
覚えるのが面倒なら、もう砂糖もしょうゆも大5でOKかも。

仕事をするにつけ「男気」の必要を感じるこの頃ですが、これはあくまで
言葉のアヤで、男女を問わず、あるとかっこいいなと思っているもの。
もちろん自分も含めてです。

2013年3月28日木曜日

ぬた狂い

生鮮食品の売り場が春めいてきて以来、狂ったように、ぬたばかり作っています。
九条ねぎが甘くておいしい。
富山のホタルイカがおいしすぎる。
いい味の白味噌が手に入る。
という三拍子が揃って、最近こればかり。

ぬたは白味噌、酢、砂糖が1:1:1がだいたい基本ですが、白味噌を1としたら、
酢は気持ち多め、砂糖は気持ち少なめにすると、私好みの味になります。
すなわちまろやかで、かつ、お酒に合う味。

うちはもとが関西なので、東京でもお正月には味噌雑煮を食べていましたが、
東京ではおいしい白味噌を売っていないので、毎年取りよせたのを分けてもらって
いました。

複雑なルートで手に入れていた貴重なその味噌を、今は歩いて買いに行ける
不思議。
出町柳にある田辺宗という店です。

2013年3月22日金曜日

吉本隆明『甦るヴェイユ』

吉本隆明『甦るヴェイユ』を読んでいて、労働者であることを知るためあえて
女工をしていた頃のシモーヌ・ヴェイユの日記の断片、そして吉本隆明の覚書に、
急激にやりきれない思いが募りました。

毎日毎日、火傷や怪我をしかねない劣悪な環境で、同じ部品を何百も作り続け、
感情、表情を失くさなければやっていけなくなるのです。

それ以上につらいのは、理にかなわぬ言い草で上役にしばしば怒鳴られること。
怒鳴られたヴェイユの体には震えが走ります。
その行為、その関係には思考が介在しない。いっさいの理性は停止し、
放棄されている。
その耐えがたさと震えは共感できます。

ヴェイユ自身は工場で働くことで、何者でもないもの、サバルタンであることを
知ろうとし、そのことで真実に近づこうとしたのだと思います。

激しい頭痛、肉体の疲労と闘いながらの彼女の行動はすごいです、
純粋で壮絶な人です。

しかし今日は、読んでいてあまりにへこたれてしまいました。
それでもなぜ読み続けているかというと、「ヴェイユと植民地主義」という
テーマの手がかりになる……かもしれないと思っているからです。

2013年3月8日金曜日

埼京線と鼻くそ +国際文芸フェス感想

表題書くのに、カタカナにするか、ひらがなにするか、漢字にするか
漢字ひらがな混じりにするか、しばらく迷いました。

ところで「国際文芸フェスティバル」は最終日だけでも滑り込んでよかった。
ジュノ・ディアス、古川日出男、デヴィッド・ピースのフィクションと東京をめぐる話、
そして何かが下りてきたかのような古川氏の朗読、日本のお経を連想させる
デヴィッド・ピースの朗読は、文学における声の力をあらためて強く感じました。
古川氏の「最近、東京が急速に面白くなくなってきている」という話を
できれば掘り下げて聞きたかったけれど、質問が切り上げられてしまい
残念でした。
クッツェーによる新作『イエスの子供時代』の朗読も聞けてよかったです。
(なぜか日本語訳朗読は谷原章介)
休憩時間にジュノ・ディアスとお話しできてうれしかった!

それはそうと、上京して埼京線に乗るたびなのですが
鼻くそをほじる人をあまりに多く見かけ、内心ぎょっとします。
今回は一日目、同じ車両の左右の斜め前にそれぞれ座っている人
(20代後半ぐらい男と40代ぐらい男)ふたりがほじり続け、
しかも!
ふたり揃ってそれを食べている!

その翌日は朝と夜で計三人見ました。
しかも!
そのうち60代ぐらいの男性は隣にいる娘らしき女性に注意されると
わざとほじったものをその女性に突き出し、見せつけていました。
じつは前回、1月にも埼京線内で数回目撃したのです。
その時衝撃的だったのが、歳の頃は30かその前ぐらい、つまり妙齢の、
黒いスーツにハイヒールといった姿でそこそこきれいな女性が
熱心に鼻くそをほじっており、しかも!
それを口にいれたのです。

このような光景に頻繁に出会う埼京線とはいったいどんな移動空間
なのでしょうか?
つい長く語ってしまいましたが、これは文学的なテーマであると
言えます。

Gor for Broke! ハワイ日系二世の記憶

松元裕之監督のドキュメンタリー映画『Gor for Broke! ハワイ日系二世の記憶』
を観に、大阪九条のシネ・ヌーヴォに初めて行きました。
すぐ隣の駅は弁天町、すなわち浪速の海辺です。

第二次大戦中に日本を相手に戦わねばならなかった日系二世たちの
インタビューをメインに構成された2012年の作品ですが、
取材に応じた人たちが1920年頃生まれと考えると
10年ぐらい前に撮られた映像なのか。
現在は亡くなっている方々もいるかもしれませんから、貴重な証言です。

戦争がらみの証言はもちろん重要なのですが、
軍のなかでハワイ出身者たちがフラを踊ったり、歌ったりしている映像など
面白い。
それからハワイの島々で日系人の子たちが共通してやっていた箒を
尖らせて作った遊具で玉を飛ばす「ピィウィー」「オカメピョー」「カマピオ」
(地域により呼び方が違う)の話、軍内で本土の日系人からハワイの日系人が
ピジン英語を馬鹿にされる話、ハワイの日系人社会での内地人と沖縄人の
微妙な関係などの話も興味深かった。

ダイアモンドヘッドを遠景でとらえた映像をバックに
サンディー(フラダンサーでもある)が歌う「ラプソディー・ラニ」に
胸をしめつけられます。

大阪は今日までで、この次東京圏では横浜のジャック&ベティで上映される予定。


2013年3月1日金曜日

東京国際文芸フェスティバル開幕


今日から三日間、東京国際文芸フェスティバル。
とりあえず三日目の午後は全部聞くつもりで、上京の準備、
およびあちこちアナウンスをしていたわけですが、
これ、申し込みが必要だったんですね!
そしてすでに申し込み締め切り……。

もう行く態勢に入ってしまったじゃないか!
たんなる自分のミスですが、なんだか文学の第一線から
取り残されてる気分になります(僻)。
しょうがないから井深ホール直接たずねて、入れないか聞いてみるか。
以下、三日目のスケジュール。
ジュノ・ディアスと古川日出男のは聞きたかったなあ。

11:00 – 12:00
「モンスターたちのいるところ」
会場:早稲田大学
開場:10:30
浦沢直樹、ジュノ・ディアス   円城塔(モデレーター)
12:00 – 14:00
[中継/合流] 走行中の都電での「その場小説」
会場:都電荒川線(-14:00
いしいしんじ


TOKYOLITFEST X 早稲田大学 PART 1
13:00 – 14:20
「これからの本の話をしよう」
会場:早稲田大学
開場:12:30
チップ・キッド、ジョナサン・サフラン・フォア 他 
市川真人(モデレーター)

14:30 – 15:50
「想像力の中のTokyo
会場:早稲田大学
ジュノ・ディアス、デイヴィッド・ピース、古川日出男、
デボラ・トリースマン(モデレーター)

TOKYOLITFEST X 早稲田大学 PART 2
16:30 – 17:45
「越境する文学」
会場:早稲田大学
開場:16:00
ジョン・フリーマン、池澤夏樹、ニコール・クラウス、
市川真人&辛島デイヴィッド(モデレーター) 他

17:50 – 18:30
Closing Reading
会場:早稲田大学
朗読:J.M. クッツェー、日本語朗読:谷原章介
イントロダクション:鴻巣友季子

TOKYOLITFEST X 伊勢丹新宿店
18:30
-19:15
「朗読ライブ」
場所:(本館地下2F ビューティアポセカリー)
ふたりの歌人が百貨店の地下でライブ朗読を敢行。
東 直子、穂村 弘


3/1-3 fri. – sun.(各日数回)
「書き手たちの館内放送」
前代未聞、詩人や作家の声が百貨店をジャック。 角田光代、谷川俊太郎、
東 直子、穂村 弘