2013年11月15日金曜日

名作一気読み

自分のための読書時間がめっきり減っているのが悩みの種ですが、
代わりというか、いっそ授業準備をインプットの機会にしてしまおうと考える今日この頃です。

フォークナー「熊」、古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』、和合亮一「詩の礫」、
川上弘美『蛇を踏む』、多和田葉子『犬婿入り』。
これがひとグループ。

フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』、目取真俊「水滴」「面影と連れて」、安部公房
「変形の記録」、伊藤比呂美『日本ノ霊異ナ話』、景戒『日本霊異記』。
これでひとグループ。

カフカ『アメリカ(失踪者)』、ストローブ=ユイレ「階級関係(アメリカ)」、多和田葉子
『容疑者の夜行列車』『旅をする裸の眼』、ラフカディオ・ハーン「チータ」。
これでひとグループ。

最近とみに短期記憶と集中力が衰えている身に、これら全部まとめて熟読・把握するのは
もはや毎度のこととは言え、きつい。
しかし、われながらいい並びだと思います。
聞いたらお得だよと心から言えます。
そして一気読み(観・聴き)した私も得しました。

2013年11月5日火曜日

人のエネルギー

何かここしばらく、仕事全般に関して空回り感や幻滅を感じることが多かったのですが、
ここに来て、というのは、本作りの最後の最後に来て、俄然希望を感じてきました。
勢いのある仕事ぶりというのは、周囲の色を変えますし、相乗効果で全体の力が増していきます。
そういう価値に鈍感になりやすいのがフォークナーのいう「中年期」の人間なのでしょうが、
歳は中年でも、老人や若者の素直なものの考え方を心がけたいと思います。
とにかく、来月初めに本が出るのが今ようやく楽しみです。


2013年7月25日木曜日

書くことについて

最近翻訳されたスティーヴン・キングのエッセイ、『書くことについて』。
授業準備のために読みながら、はからずもひとりで爆笑の連続です。
下ネタ、というか、どちらかというと子供じみたスカトロネタの比喩を使い、
的確な創作技法を語れるのがすごい!
一番笑ったのは、「履歴書」の章にあるツタウルシの葉っぱでお尻をふいてしまう
エピソードかな。

私はどうもひたすら生まじめというのが苦手で、まじめな仕事やまじめな研究を
前にしても突然ふざけたくなることがあるのですが、そんな気分にぴったりの本です。

「書き方」といっても著者はもちろん英語を念頭に置いており、それが日本語訳として
書かれているわけだけれど、「受動態と副詞は臆病な作家が使う」とか英語の勉強にもなるなあ。
そして日本語に当てはめて考えられることも多い。

「いいものを書くためには、不安と気取りを捨てなければならない」
同感。
でもまだまだ道は長いです。

2013年6月20日木曜日

お知らせ:『南無ロックンロール二十一部経』書評

アート、音楽などについての選りすぐりの情報を網羅したカルチャーニュースサイト
CINRA.netに、書籍のレビューが掲載されています。

「咆哮(ハウリン)する経典の破壊的な重さ
  ――古川日出男『南無ロックンロール二十一部経』

ものすごい重量の本で、「なんなんだこれは!!」という衝撃をなんとかがんばって
文章にしました。
すごいテンションで二度熟読した~~!
よかったら読んでみてください。

http://www.cinra.net/review/20130620_book_furukawa.php

私にとってはウェブマガジン・デビューです。

2013年6月11日火曜日

梅酒二本目

前回の追記的内容ですが、備忘録として。
昨日、梅酢を作ろうとしたところ、やっぱり梅酒も足りないような気がして、
半分は梅酢、半分は梅酒にしました。

梅酢
梅(南高梅)500グラム、米酢1本、氷砂糖500グラム

梅酒(辛口、たぶん)
梅500グラム、ホワイトリカー900ml、氷砂糖200グラム

関西のほうが和歌山産梅の販売期間は少し長いかも……?

糠漬けもまた始めました。
まずはきゅうり。
生の水茄子も出始めたので、糠床の量をもう少し増やしたら漬けます。


2013年6月6日木曜日

今年の梅酒

今しがた、二年ぶりに梅酒を漬けたので、急いで備忘録に。

和歌山の南高梅1キロにサントリーの果実酒用ブランデー1,9リットル強、
氷砂糖は550グラムです。
(お酒のパックに1、8リットルと書いてあったけど、量ってみたらだいぶ多かった。
良心的ですね)

過去のブログを遡ると、
2011年は梅1キロに対し、リカー1、35リットル、砂糖300グラムでやや辛口、
2010年はブランデー1、3リットル、砂糖400グラムでやや甘、
2008年はリカー1リットル、砂糖380グラムで甘口。

算数に弱いのでわからないのですが、この感じだと今年のはやや甘ぐらいでしょうか。

それと過去のブログに、6月9日を「梅酒ロックの日」と命名し、今後はこの日に漬けよ
と書かれていました。
今日はまだ早かったわけです。

以前は非常勤を6校かけもちしており、6月が一番忙しかったので、
関東では6月一週目しか売っていない南高梅を買ってすぐ下処理し、梅酒作りを
するのは、けっこう大変でした。

今のほうが総じて忙しいけれど、時期的な集中と移動ということでは、あの頃は
きつかったなあ。

近所の自然食品店で買った南高梅はものすごく大ぶり肉厚でこれまでで最高のもの。
さすが産地に近いということか。
関東では一週間限定でしたが、まだしばらく売っているようなら、もう一本ぐらい
今度は辛口のを漬けたいです。

2013年6月4日火曜日

初写経

昨日は引率者として奈良の薬師寺へ遠足に行きました。
前回来たのは高校の修学旅行のときですから、じつに三〇年以上ぶり。
ここで念願の写経を経験しました。

お堂へ入るとき、まず丁子、つまりクローヴをひとつ渡されます。
写経しているあいだじゅう、浄化のため、口に含んでおくのです。
象のかたちの入れ物に入ったお香をまたぎ、席に着きます(香象)。
それから般若心経の書かれた紙の上に透き通った和紙を重ねる。
ゆっくりと墨を摺り、小筆で上からなぞってゆきます。

お堂は広く、それなりに人はいるのに静か。
書いていれば無になれるかと思ったけれどそうそうなれず、邪念が次々
頭をよぎる。
そのうち、260何文字のなかで一番よく出てくるのが「無」だなと気づきます。
「無」ってなんでこういう字なんだろう、と思っているうち、「無」を書いて
いるときだけ、無になれるようになりました。

うちは曹洞宗なので、般若心経はわりと馴染みがあり、頭のなかで
お経の声が聞こえてきます。
奇しくも先週来、ちょうど一年前に亡くなった父が何度も夢枕に立って
うなされるので、関西までも来てるのかーと何度も自分で朗読していた
ところでした。

母方のほうで馴染みのある浄土真宗の浄土三部経と読み比べたりしてみると、
断然内容がいけてる気がします。
理解しているのかと言われればまったくそのステージには達していませんが、
とりあえず完全に暗誦して、いつでも唱えられるようにしたいなあ。

写経についても、なんだか書き終えてすきっとしたので、またやってみたい
感があります。

2013年5月30日木曜日

朗読劇「銀河鉄道の夜」関西ツアー

一昨年の初演から数度にわたり通ってきた朗読劇「銀河鉄道の夜」。
とうとう関西で立ち会える日がやってきました。

京都公演は、叡山電車を貸切りでという異例の試みです。
往路では、暮れなずむ車窓の景色を目に入れながら聞く小島ケイタニーラブさんの
澄み切った歌声。
鞍馬駅の待合室で、天狗に見守られながら聞く朗読劇。
復路では、揺れる裸電球によりまったく別の空間となった車両のなかでの渾身の朗読。

ふだん通勤電車として使っているだけに、なんとも不思議で、興奮を誘う体験でした。

そして大阪・心斎橋の劇場でおこなわれた完全版。
あらたに加わった東北・被災地の映像、それとオーバーラップする一見関係のない
詩の朗読はことばで言い表せません。
「らっこの上着」という新しいキャラクターもユーモラスでよかった。
(なんで「上着」がキャラクターなのか)

これで五回観たことになり呆れられてもいるのですが、見るたびぐっと来てしまうし、
この劇は生成しつづけている!という実感があります。

またどこかで立ち会ったとしても、真新しい気持ちで心打たれることを確信しています。


ところでこの朗読劇、土曜日の朝日新聞でも記事になっていましたが、テレビカメラも
入っていたんですね。
大学で「KBSのニュースで映ってましたよ!」と言われてしまいました。

2013年5月21日火曜日

ジクジクたる思い

言葉の覚え間違い、読み間違いというのは、私はこれまで誇れるほどありますが、
職業柄このごろは、自分でちょっと怪しいと感じると先回りして調べ、恥をかくリスクを
回避することが多くなりました。
なんか、潔くない、かわいくない態度ですね。

覚え間違い、大いに楽しいではありませんか。
少し前、読んだレポートにあったのが「ジクジクたる思い」。
これいい!
感じが出ている。
今の私の気持ちにぴったり!
と、膝を打ちました。

関西は、もともとの文字の読みが口語として崩れて、それがまた文字の読みとして
再定着する例が地名などに多いのが面白いと思います。

うちのすぐ隣りの「釜座通り」が「かまんざ」通りなのは、かっこいい。
「松屋町」が「まっちゃまち」とか。

ちょっとクレオール語が文字に表記される感じと似ている?

2013年5月13日月曜日

お知らせ:『双頭の船』書評

遅くなりましたが、お知らせです。
現在発売中の『すばる』6月号に、池澤夏樹著『双頭の船』の書評、「彼岸と此岸の渡し船」を
書いています。

3.11以後、文学者なら誰もが畏れ慄いて立ち止まり、どう世界を捉え直し、未来を思い描くかを
あらためて深く考えたはずです。
そうした本気の熟慮が創作に生かされたひとつの例がこの小説だと思っています。

よかったらご一読ください。

2013年5月3日金曜日

フォークナーと銃規制

今日、アメリカで5歳の兄が2歳の妹をライフルで誤射し、死なせてしまったという
ニュースがありました。
「初めてのライフル」などと宣伝され、子供に買い与えられている現実があるとのことで、
聞かされれば、日本人の感覚としては「非常識」「ありえない」と当然思うわけです。

それでも、昨日フォークナーの「熊」を読み終わった延長で考えると、
これだけ銃規制を言われてもアメリカの銃社会が変わらないのは、基本のところにこの
「熊」の世界があるからだと妙に腑に落ちてしまうのです。

「熊」の主人公の「少年」も、10歳から銃を持たされ、大人たちにまじって森へ入る。
最初は何もできないんだけれど、森のことをだんだん知り、動物の行動を知り、
獣をしとめられるようになってゆく。
それが大人になるということなんですね。

もちろん、今の子供が生活のために狩猟をするわけではありませんが、
起点にはフォークナーの世界があると思うと、善悪は別にして、少なくとも
たんなる流行りとしての「ありえない」風潮ではないんだという気がしています。
それがアメリカなんだなと思います。

2013年5月2日木曜日

『白鯨』と「熊」

つねに何冊かの本を同時並行で読んでいるのですが、
昨日は長らく熟読していたメルヴィルの『白鯨(モービィ・ディック)』(1851)を、
今日はフォークナーの「熊」(1942)を、立て続けに読み終えました。

ふたつの小説は書かれ方も規模もまったく違うとはいえ、どちらも、
「この作家はなぜこれを書こうとするのか、書いてしまうのか」という謎(というか
疑念というか)を読み手に抱かせ、その謎にこちらも惹きこまれてしまうという
ところは似ているような気がします。

書かれ方が違うといっても、それぞれ、巨大な鯨をしとめることへの執着、
巨大な熊を狩ることへの熱を描いているのだから、ともにハンターの小説であり
日本にはあまりない、アメリカらしい小説ということもできます。

『白鯨』は置いておいて「熊」についていえば、この中編における獣(熊、
犬、鹿)の描写は圧倒的な迫力があります。
力強いとか、猛々しいとかいうことでなく、その寡黙さや無関心を含め、
ただずまいや動きの書かれ方に凄みがある。
そして、決して獣対人間とか、ましてや擬人化された獣とかいう描き方は
ありえず、自然(森)の一部としての獣なのであり、人もまた同等に
そうなのです。
時に人は、獣の動きを模倣しているかのように描かれます。

これは秋にやる授業で、獣をテーマにした小説のひとつとして読むつもり
なのですが、あらためていいのを選んだなあと自分のラインナップに
惚れ惚れ。
これを古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』などと一緒に
やるんですよ。
がんばろう。

2013年4月23日火曜日

朝堀りたけのこ

橋を渡って出町柳の上京区側に入るとすぐのところに古い商店街があります。
ふだんは白味噌屋さんぐらいにしか行かないのですが、今日は八百屋さんへ。
先週ぐらいから、京都産の朝掘りたけのこが出るようになりました。
そして見るなり一目ぼれするような、きれいなクリーム色のたけのこに出会い、
即買い。
洛西・塚原産の中くらいの大きさで、1300円。
たぶん安い。

おばさんに「糠なんか入れたらあかん」と茹で方を指導されました。
新鮮で灰汁なんかないから、水だけで茹でないともったいないんだそうです。
曲がったたけのこのほうが甘みがあるとも(根拠はよくわからん)。

ご指導にしたがって水から30分ほど(ふつうよりだいぶ短い)茹で、
刺身にして、わさび醤油で食べました。
甘くて、おいしい。
幸せ。

明日は新もののわかめといっしょに若竹煮にします。
このまえは八幡市美濃山の朝掘りたけのこで、刺身・若竹煮・たけのこご飯
とフルコースを楽しみました。
この春は胃が痛くなるほどのたけのこ三昧です。

八百屋のついでに商店街の小さい本屋で「マーガレット」創刊50周年号を買い、
たけのこ弁当を買い、研究室の前に植える花の苗と土を買い、
よろけるほどの大荷物で出講しました。

2013年4月18日木曜日

タランティーノ『ジャンゴ 繋がれざる者』

見たのではなく、見そびれました。

史上初めて南部の奴隷制度を真っ向から扱ったアメリカ西部劇として、ぜったい見ようと
思っていたのに、うっかりしていて気づけば関西圏では公開終了していました。
唯一、枚方の劇場で明日までやっていますが、上映時間が遅いうえに駅からすごく遠い。
運よく名画座でかかるか、DVDを待つしかありません。
人のせいにするわけではないけど、なぜ身近で誰も話題にしていなかったのかなあ。

解放奴隷ジャンゴ(ジェイミー・フォックス)とドイツ系の男(クリストフ・ヴァルツ)が、
残酷なフランスかぶれの奴隷商人ムッシュ・キャンディー(レオナルド・ディカプリオ)に
挑んで、ジャンゴの妻である奴隷女性を奪還するという話。
ディカプリオは酷薄な奴隷主をうまく演じそう。

タランティーノはこの作品をエンターテインメントとして仕立てているそうですが、
ハリウッドがこれまで奴隷制度を、存在しないとは言わないまでも、やはり隠蔽して
いるとしか言えないような描き方をしてきたことを思えば、「どんな映画だろう」と
見てみたい気持ちになります。
スパイク・リーは、この映画を「自分の先祖への侮辱だから見ない」と公言している
ようですが(見ていないのに侮辱だとわかるのでしょうか)。

きちんと情報チェックしていなかったくせに、見逃したと思うとなんとしても見たくなります。
『ジャンゴ 繋がれざる者』、まだ見られる地域の方はぜひ。

そういえばタランティーノの名前ってクエンティンなんですね。
クエンティンが撮る南部を舞台にした黒人奴隷と白人の葛藤の映画。
うーん、イミシン。




2013年4月17日水曜日

カザフ青年へのエール

 

 

 

熱が出て、仕事の集中力がまるでなくなったため、ソファで過去に録画したものを
ぼんやり見て過ごしていましたが……
3月に録画しておいたフィギュアスケート世界選手権フリーのデニス・テンがすごい!
十代から注目されていたものの、その後今ひとつ伸びていない時期が長かった気が
します。
それがここに来て、技術、表現とも驚くべき存在感、惹きつける力を発揮しています。
映画『アーティスト』からの曲もよかった。
このままの勢いで、2月のソチにピークを持っていければ、金メダルを獲れるかもという
予感が。
高橋大輔や羽生ももちろん応援していますが、デニスにも優勝を目指してほしいです。

それにしても、辺境カザフスタンから来たこの若い選手に三年前から注目していた
自分は見る目があるとつくづく自画自賛しています。
以下、かつての日記を再録。

2010-2-17 カザフから来た少年

何なのだ、ジュニア上がりにして周りを惹きつけるこの技術と圧倒的な音楽性は。
高橋ともども、アジア人はリズム感が悪いなどといったい誰が言った?

高橋大輔のショート・プログラムは期待通りのすばらしいものだったが、その直前
出ていたデニス・テンという若い選手を不勉強にも知らず、大選手のグループに
運悪く紛れ込んだアジア(妙に日本人顔をした)の弱小選手と見くびっていた。

デニス・テンカザフスタン高麗人の家庭に生まれた16歳。
コーチは浅田真央と同じくタラソワだそうだ。

エフゲニー・プルシェンコのふてぶてしいまでの強さはどこか好ましい。
復帰、そしてこれでもかという4回転へのこだわりは、スケーティングの美しさ
ばかり重視するジャッジへの異議の意味もあるようだ。
それに比べて、チャレンジのないエヴァン・ライサチェクのソツのなさというのは
毎度どうも退屈である。
今日も会心の出来だったようだけれど、この人の演技の途中には、私はつい
トイレに行ってしまう。
強さと危なげを併せ持つブライアン・ジュベールはつねにうまく行ってほしいと
願っているが、今回は絶望的。
オリンピックのような舞台では、往々にしてライサチェクのような選手がトップに
なりがちだ。

高橋はテクニック・エレメンツ48,90、コンポーネント・エレメンツ41,35、
減点ゼロの自己最高90,25点。

 

2013年4月16日火曜日

京都御所のクレソン

住んでいるところの目と鼻の先にありながら、どうも足を踏み入れがたかった御所。
昨日、トイレを借りるという尾籠な理由で初めて敷地に入ってみたら、八重桜が
満開でした。
それはたいへん美しく、しばし見入っていたのですが、たわわの花の重みで
垂れ下がった枝の間を分け入ってゆくと小川が流れていて、よく見るとそこに
阿蘭陀辛子、すなわちクレソンが群生していました。

前の晩、だいぶ不健康な夜を過ごし、からだがビタミンを欲していたので
小川のきわまで入っていき、クレソンをひと束摘み、小川の水で洗って
その場でばりばり食べました。
辛みが強くて、濃い味で美味しく、また摘みに戻ってしまいそうです。

「野生のクレソンを食べた」という認識ですが、ひょっとしたら皇室から盗みを
はたらいたということにもなるのでしょうか。

2013年4月13日土曜日

最近読んだ本

本はもう目がつぶれそうなほど読んでいますが、最近はしばらくすると
読んだことすら忘れてしまうことがあるので、このひと月ほどの間に
読んだもの・再読したものを備忘録として記しておきます。

メルヴィル『白鯨』岩波文庫の下
池澤夏樹『春を恨んだりはしない』
池澤夏樹『スティル・ライフ』
池澤夏樹『真昼のプリニウス』
池澤夏樹『双頭の船』
安部公房『方舟さくら丸』
セルバンテス『ドン・キホーテ』岩波文庫の前編の一
ダニー・ラフェリエール『ニグロと疲れないでセックスする方法』
冨原眞弓『ヴェーユ』
吉本隆明『甦るヴェイユ』
フロベール『ボヴァリー夫人』

追記:上のリストに加えて忘れていたもの

池澤夏樹『雷神帖』
黒田夏子『abさんご』

追い詰められながらも楽しく読んでいますので、やっぱり本は好きなんだなと
思いますが、ここのところ義務の読書が先んじて、外国語の本を読む時間がなく、
後ろめたい気持ちがいつもつきまとっています。

目がかすんで、焦点スピードがどんどん遅くなっているのも、老化の一種
なのでしょうか。
目が見えず、音、匂い、触覚だけの世界というのも興味はありますが、
とりあえず仕事ができなくなるので困りますね。
この頃あまりに目が疲れて見えにくく、ちょっと怖くなったりします。

2013年4月7日日曜日

ダニー・ラフェリエール書評

『すばる』5月号で以下の書評をしています。

「すけこましニグロの見出された軽さ」
ダニー・ラフェリエール『ニグロと疲れないでセックスする方法』(立花英裕訳、藤原書店)

ラフェリエールはカリブ海ハイチ生まれ。
70年代にモントリオールへ亡命し、85年、本書でデビューした作家です。

買うのも人前で読むのも、なかなか勇気のいる本ではありますが、れっきとした文芸書。
ジャズが響く多文化都市モントリオールの片隅でくり広げられるニグロ青年の日常から
80年代特有の空気が伝わってきます。

先に訳された『ハイチ震災日記』『帰還の謎』(メディシス賞受賞)以来の書評でした。
(前は『図書新聞』に掲載してもらいました)
よろしければご笑覧ください。

2013年4月4日木曜日

新じゃがの男気風

新学期、今年度スタートした新学科の仕事が押し寄せ、レシーブを返しても返しても
次の球が飛んできますが、合間に美味しいものを食べ、英気を養っておきたい。

この春は、去年できなかった京たけのこ三昧をするつもりですが、大学近くに
トラックで売りに来る農家のおじさん曰く、「地元のは4月20日頃から」とのこと。
なので今は新じゃがです。

新じゃがの煮っころがし、世に普及するレシピを見ると、だいたい少量の出汁に
しょうゆと砂糖を大さじ1~2というような、お上品なものですが、私はもっと
がつんと男気のあるものを作りたい。
煮っころがしはそのほうがぜったいに美味しいです。

まずは、小さめの新じゃがをたわしでこすり洗います。
フライパンに多めの油を入れたら、皮に軽い焦げ目がつき、中味のほくほく感が
手に伝わってくるまで、炒め揚げのようにします。
余分な油を切って、日本酒をじゃーっと大胆に回し入れ、さらに砂糖大さじ4、
しょうゆを大さじ5。
で、しばらくぐつぐつ煮詰めてできあがり。

調味料のこの大胆さが、こってりした美味しさの決め手。
水はまったく入れません。
覚えるのが面倒なら、もう砂糖もしょうゆも大5でOKかも。

仕事をするにつけ「男気」の必要を感じるこの頃ですが、これはあくまで
言葉のアヤで、男女を問わず、あるとかっこいいなと思っているもの。
もちろん自分も含めてです。

2013年3月28日木曜日

ぬた狂い

生鮮食品の売り場が春めいてきて以来、狂ったように、ぬたばかり作っています。
九条ねぎが甘くておいしい。
富山のホタルイカがおいしすぎる。
いい味の白味噌が手に入る。
という三拍子が揃って、最近こればかり。

ぬたは白味噌、酢、砂糖が1:1:1がだいたい基本ですが、白味噌を1としたら、
酢は気持ち多め、砂糖は気持ち少なめにすると、私好みの味になります。
すなわちまろやかで、かつ、お酒に合う味。

うちはもとが関西なので、東京でもお正月には味噌雑煮を食べていましたが、
東京ではおいしい白味噌を売っていないので、毎年取りよせたのを分けてもらって
いました。

複雑なルートで手に入れていた貴重なその味噌を、今は歩いて買いに行ける
不思議。
出町柳にある田辺宗という店です。

2013年3月22日金曜日

吉本隆明『甦るヴェイユ』

吉本隆明『甦るヴェイユ』を読んでいて、労働者であることを知るためあえて
女工をしていた頃のシモーヌ・ヴェイユの日記の断片、そして吉本隆明の覚書に、
急激にやりきれない思いが募りました。

毎日毎日、火傷や怪我をしかねない劣悪な環境で、同じ部品を何百も作り続け、
感情、表情を失くさなければやっていけなくなるのです。

それ以上につらいのは、理にかなわぬ言い草で上役にしばしば怒鳴られること。
怒鳴られたヴェイユの体には震えが走ります。
その行為、その関係には思考が介在しない。いっさいの理性は停止し、
放棄されている。
その耐えがたさと震えは共感できます。

ヴェイユ自身は工場で働くことで、何者でもないもの、サバルタンであることを
知ろうとし、そのことで真実に近づこうとしたのだと思います。

激しい頭痛、肉体の疲労と闘いながらの彼女の行動はすごいです、
純粋で壮絶な人です。

しかし今日は、読んでいてあまりにへこたれてしまいました。
それでもなぜ読み続けているかというと、「ヴェイユと植民地主義」という
テーマの手がかりになる……かもしれないと思っているからです。

2013年3月8日金曜日

埼京線と鼻くそ +国際文芸フェス感想

表題書くのに、カタカナにするか、ひらがなにするか、漢字にするか
漢字ひらがな混じりにするか、しばらく迷いました。

ところで「国際文芸フェスティバル」は最終日だけでも滑り込んでよかった。
ジュノ・ディアス、古川日出男、デヴィッド・ピースのフィクションと東京をめぐる話、
そして何かが下りてきたかのような古川氏の朗読、日本のお経を連想させる
デヴィッド・ピースの朗読は、文学における声の力をあらためて強く感じました。
古川氏の「最近、東京が急速に面白くなくなってきている」という話を
できれば掘り下げて聞きたかったけれど、質問が切り上げられてしまい
残念でした。
クッツェーによる新作『イエスの子供時代』の朗読も聞けてよかったです。
(なぜか日本語訳朗読は谷原章介)
休憩時間にジュノ・ディアスとお話しできてうれしかった!

それはそうと、上京して埼京線に乗るたびなのですが
鼻くそをほじる人をあまりに多く見かけ、内心ぎょっとします。
今回は一日目、同じ車両の左右の斜め前にそれぞれ座っている人
(20代後半ぐらい男と40代ぐらい男)ふたりがほじり続け、
しかも!
ふたり揃ってそれを食べている!

その翌日は朝と夜で計三人見ました。
しかも!
そのうち60代ぐらいの男性は隣にいる娘らしき女性に注意されると
わざとほじったものをその女性に突き出し、見せつけていました。
じつは前回、1月にも埼京線内で数回目撃したのです。
その時衝撃的だったのが、歳の頃は30かその前ぐらい、つまり妙齢の、
黒いスーツにハイヒールといった姿でそこそこきれいな女性が
熱心に鼻くそをほじっており、しかも!
それを口にいれたのです。

このような光景に頻繁に出会う埼京線とはいったいどんな移動空間
なのでしょうか?
つい長く語ってしまいましたが、これは文学的なテーマであると
言えます。

Gor for Broke! ハワイ日系二世の記憶

松元裕之監督のドキュメンタリー映画『Gor for Broke! ハワイ日系二世の記憶』
を観に、大阪九条のシネ・ヌーヴォに初めて行きました。
すぐ隣の駅は弁天町、すなわち浪速の海辺です。

第二次大戦中に日本を相手に戦わねばならなかった日系二世たちの
インタビューをメインに構成された2012年の作品ですが、
取材に応じた人たちが1920年頃生まれと考えると
10年ぐらい前に撮られた映像なのか。
現在は亡くなっている方々もいるかもしれませんから、貴重な証言です。

戦争がらみの証言はもちろん重要なのですが、
軍のなかでハワイ出身者たちがフラを踊ったり、歌ったりしている映像など
面白い。
それからハワイの島々で日系人の子たちが共通してやっていた箒を
尖らせて作った遊具で玉を飛ばす「ピィウィー」「オカメピョー」「カマピオ」
(地域により呼び方が違う)の話、軍内で本土の日系人からハワイの日系人が
ピジン英語を馬鹿にされる話、ハワイの日系人社会での内地人と沖縄人の
微妙な関係などの話も興味深かった。

ダイアモンドヘッドを遠景でとらえた映像をバックに
サンディー(フラダンサーでもある)が歌う「ラプソディー・ラニ」に
胸をしめつけられます。

大阪は今日までで、この次東京圏では横浜のジャック&ベティで上映される予定。


2013年3月1日金曜日

東京国際文芸フェスティバル開幕


今日から三日間、東京国際文芸フェスティバル。
とりあえず三日目の午後は全部聞くつもりで、上京の準備、
およびあちこちアナウンスをしていたわけですが、
これ、申し込みが必要だったんですね!
そしてすでに申し込み締め切り……。

もう行く態勢に入ってしまったじゃないか!
たんなる自分のミスですが、なんだか文学の第一線から
取り残されてる気分になります(僻)。
しょうがないから井深ホール直接たずねて、入れないか聞いてみるか。
以下、三日目のスケジュール。
ジュノ・ディアスと古川日出男のは聞きたかったなあ。

11:00 – 12:00
「モンスターたちのいるところ」
会場:早稲田大学
開場:10:30
浦沢直樹、ジュノ・ディアス   円城塔(モデレーター)
12:00 – 14:00
[中継/合流] 走行中の都電での「その場小説」
会場:都電荒川線(-14:00
いしいしんじ


TOKYOLITFEST X 早稲田大学 PART 1
13:00 – 14:20
「これからの本の話をしよう」
会場:早稲田大学
開場:12:30
チップ・キッド、ジョナサン・サフラン・フォア 他 
市川真人(モデレーター)

14:30 – 15:50
「想像力の中のTokyo
会場:早稲田大学
ジュノ・ディアス、デイヴィッド・ピース、古川日出男、
デボラ・トリースマン(モデレーター)

TOKYOLITFEST X 早稲田大学 PART 2
16:30 – 17:45
「越境する文学」
会場:早稲田大学
開場:16:00
ジョン・フリーマン、池澤夏樹、ニコール・クラウス、
市川真人&辛島デイヴィッド(モデレーター) 他

17:50 – 18:30
Closing Reading
会場:早稲田大学
朗読:J.M. クッツェー、日本語朗読:谷原章介
イントロダクション:鴻巣友季子

TOKYOLITFEST X 伊勢丹新宿店
18:30
-19:15
「朗読ライブ」
場所:(本館地下2F ビューティアポセカリー)
ふたりの歌人が百貨店の地下でライブ朗読を敢行。
東 直子、穂村 弘


3/1-3 fri. – sun.(各日数回)
「書き手たちの館内放送」
前代未聞、詩人や作家の声が百貨店をジャック。 角田光代、谷川俊太郎、
東 直子、穂村 弘

2013年2月26日火曜日

受験国語とギリシア・マキノ


これから大学で文芸を学びたいと思っている人たちに向けての
ミニ講義というものがあります。
そこで知恵を絞って考えついたのが、受験国語用テキストを
文学として楽しく読んでしまうという企画です。
このため目下、牧野信一と須賀敦子をいろいろ料理しているところ。
じつはそれぞれ、今春のセンター試験、大阪府公立高校の入試で
出題された作家なのです。

こう読んでみると、端正で奥深い須賀敦子の文章(『一トンの塩』)
ともかく、
ギリシア・マキノと呼ばれた牧野信一というのは変な作家ですね。
文学を始めるのに自分は何も知らないことに気づき、ギリシアまで遡って、
アリストテレス、プラトンと読み始め、パスカル、セルバンテスと
読み漁るんですが、必要なだけ読むには100歳まで生きても間に合わない。
挙句に自殺してしまうという、文学者として理屈はわかるがどうにも
居たたまれない人でした。
居たたまれないというのは、私自身その傾向があるから思うのですが、
「虱潰し方式」は生産的ではない手法です。
石井洋二郎『告白的読書論』にあった「割り算(あるいは引き算)の教養」
という名言を心に刻んでいる今日この頃です。

2013年2月19日火曜日

世界文学ナビ:カリブ編


ここのところ著者の方々からの情報が立て続けにあり、知ったのですが、
毎日新聞月曜日の朝刊で「新世紀・世界文学ナビ:カリブ編」が連載されているらしい。
「らしい」というのは、関西版では探せど探せど見つからなかったから。
ようやく毎日のウェブサイトで探し当てました。
1月から始まっていて、昨日のダニー・ラフェリエールでもう7週目。
 
以下がラインナップです。(カッコ内はナビゲーター)

1.デレク・ウォルコット(栩木伸明)
2.アール・ラヴレイス(中村和恵)
3.フリア・アルバレス(都甲幸治)
4.ジュノ・ディアス(都甲幸治)
5.マリーズ・コンデ(くぼたのぞみ)
6.パトリック・シャモワゾー(小野正嗣)
7.ダニー・ラフェリエール(立花英裕)

一般には知られていない、でも読めばぜったい面白い作家ばかりが
コンパクトに紹介されていて、すごくいい「ナビ」なのに、
東京版でしか読めないなんてもったいない。

新聞の紙面というのは、東西でずいぶん作りが違うのですね。
あらためて関西版の文化面を見てみると、
やはり日本の伝統文化関係の話題が中心。
身近で親しみがあるのでしょうが、外の世界の情報が少ないのは少し寂しい。

今時、新聞の紙面など大した影響力がないかもしれず、
ネットで情報入手ができればいいのかもしれませんが、
今でも紙の新聞の日常的・視覚的効用を信じている私としては
一人間の興味の形成に関わってくる問題だという気がしてしまいます。

ともあれいい企画ですので、関西地方の人はネットででも読みましょう。



 





2013年2月2日土曜日

もう二月

年が明けて、なんだかんだと過ぎてゆくうちにもう2月。
毎年この時期は進みが異様に早くて、はっと我に返ると3月になり、
無力感に襲われるのがつねです。
と言いつつ、冬至を基準に暦を考えているので、ずいぶん日が長くなったなあ、
もうすぐ春になる!と実感するのも今の時期なのでした。
(もう午後6時ぐらいまで日が暮れないんですよ、気づいていました?)

京都の冬はやはり寒く、蟄居するしかないところへ、
ようやく懸案の大事な仕事が動き出しました。
頓挫気味で待ちわびていましたが、ちょうどいい時期だったかもしれません。
大学の仕事にずっと流されてきた感がありましたが、
そろそろ自律的に自分の原稿もがんばりたいです。

そう言いながら、明日は丹波篠山へ猪を食べに行きます。
鯨の次は山鯨。

2013年1月9日水曜日

牛すじの煮込み

魚でも肉でも野菜でも、こちらで出回っている食材は関東とはだいぶ違っています。
夏場の鱧、鯛、万願寺とうがらしと日常の食卓がだいぶ様変わりしましたが、
冬になってからにわかに注目しているのが牛すじ。
これがどこのスーパーでもふつうに安く売られているのを見て、料理をする暇もないころから
「いずれ何かせねば」と思っていました。

やはり定番はこんにゃく、にんじんとの煮込みです。
牛すじは下ごしらえの手間があるし、長時間煮て柔らかくしたいので、
二時間半ぐらいはかかります。
家で原稿たくさん読まねばならない時など、隣りの鍋で作るのにちょうどいい。
柔らかく煮上がったら、錦市場の七味と白ネギをたっぷりかけて食べます。
美味しすぎて、日本酒が進んで進んで困ります。

この前は粗みじんにした牛すじを赤ワインとトマトで煮込み、ボロネーゼソースを作って
フェットチーネと合わせました。

牛すじの煮込みは、じつは東京・神楽坂にある会津の蕎麦屋、蕎楽亭のが好きです。
福島のきりっとした酒を呑みながら、あのあっさり上品な牛すじをまた食べたい。
しかし江戸が遠く感じられるなあ。