2012年5月23日水曜日

『エクスクレイヴ』5号!

スペイン文学研究から作曲まで広範なジャンルに才能を持つ富田弘樹さんが主宰のリトルマガジン、『エクスクレイヴ』5号が完成しました。
私は短編小説「月村異聞」を寄稿しています。
素材として大きな関心事のひとつがあったのですが、うまく盛り込めたかどうか……
いろんな読み方がされればいいと思います。

他の執筆陣も毎度のことすばらしいです。
もし興味をお持ちの方は言ってください。

2012年5月21日月曜日

金環日蝕@鴨川べり

万難排して早起きした今日この日の朝、京都は運よく晴れ間が広がりました。
東側にベランダのある家からでもよかったのですが、20分ほど歩いて鴨川べりへ。
すでに集まっていた家族連れやカップルにならい、私も土手に座って、欠け続ける太陽を観察しました。
そのスピードたるや、けっこう速いですね。
7時29分、金の輪がくっきりと見えた時には、周りの子供たち同様、はしゃいだ気持ちになりました。
その後また、バス停でおばちゃん二人に観察用メガネを貸してあげて、一緒に盛り上がって。

観察用メガネが付録についている科学雑誌を買うのに出遅れ、一昨日あわてて本屋まわりをしたのですが、なんと4軒の店ですでに売り切れ。
5軒目の本屋に唯一残っていたのは、東京書籍の『宇宙図鑑』2500円也でした。
もう後に退くわけにはいかないので、甥っ子にあげるからいいやと自分を納得させて買いました。

日蝕観察の足で大学へ行ったので、ずいぶん早い出勤となりました。
朝のYoYo館は気持ちがいい!
森林の清冽な香りを吸い込むたび、もっと早くに出勤してここに来ればよかったと思いますが、今日はそれを実践して得した気分です。

午前中、YoYo館のまわりの地面を少しばかり耕しました。
石ころも多いけど、ミミズがすごく多い。
いったいシャベルで何匹ぶったぎってしまったことか。
ミミズがこれだけいるってことは、いい土だっていうことです。
シャベルは家の付近でどうしても見つからないとぼやいていたら、事務のKさんがわざわざ私のために買ってきてくれたものです。

2012年5月20日日曜日

35年ぶりの『異邦人』

今日は読書会。
テキストはアルベール・カミュの『異邦人』で、さまざまなテーマをめぐり、2時間半話が止まりませんでした。
奇しくも、先週の「引揚者」シンポジウムでも取り上げられた、というより「やり玉に挙がった」この小説が今日はまったく別の角度から論じられ、多様な読みをうながす作品なのだなあとあらためて実感しました。

個人的には、実家の本棚で見つけた『異邦人』の文庫本に「77年8月12日」と下手くそな字で日付が書き入れられているのを発見したことがなにより一番の驚きでした。
通読したのはだいぶ前に一回きりだったと記憶していましたが、まさか35年も前だったとは。
35年も前の自分など今の自分とは完全に違う人間なわけで、そうなるともう「私はこれを読んだ」と言えないのではという気がしてきます。
当時の私もカミュがフランス人作家だということぐらい知っていたはずですが、この小説の舞台がアルジェの近くだなどとわかっていたでしょうか。たぶんアルジェリアがフランスの植民地だとも知らなかったと思うし、フランスが舞台なのになんだか太陽がギラギラしていて暑そうだなぐらいの理解だったと思います。
なんとなくさらっと面白くは読んだけれど、「すごい!」と熱狂するほどでもなかった記憶があります。

別人間になった今、あらためて読んでみると、簡潔にうまくよく作りこまれている小説だなあとの感想を持ちます。
特に冒頭の葬儀の場面と、浜辺でアラブ人を殺す直前の場面の書き方はすごい。
アラブ人の顔が描かれていないことがポスコロ的批判にさらされていますが、母親の顔も同じように書かれていません。これは即物的な感覚だけを頼りにするムルソーの人物造形のため、あえてこのような描き方が選択されているのだと思います。
(宗主国の人間が被植民者ひとり殺して死刑判決という筋などは、植民地の現実を隠蔽していると言われても仕方ないかもしれませんが)
有名な書き出しも含め、小説にしかありえない不思議な時間が流れている作品とも感じます。

同時に読んだ、アルジェでの貧しかった幼年時代を回想するいくつかのエッセイがよかった。
尊大なおばあちゃんに苛められながら耐えるスペイン系のお母さんへの息子の思慕をつづった「裏と表」など胸キュンでした。

2012年5月15日火曜日

住所の謎

京都の新住所が長すぎて、大学や銀行などの書類に書き込むたび手が疲れ、そろそろ腱鞘炎になりそうな昨今。
ぼやいていたら、グラフィック・デザイナーをしている東京の家の隣人が、ゴム印にするための住所のデザインを5種類も作ってくれました。
さすがプロで、どれもこれもかわいい!
早くお洒落な住所ハンコをボンボン押して、手紙を出したりしたいものです。

それにしてもわからないのが京都の住居表示。
パソコンで7ケタの郵便番号を入力すると、今どきは町名に変換されますが、普通は一種類しか出てきませんよね。
それが新しいうちの郵便番号の場合、5種類も出てくるんです。
その5種類とは「A通B町下る」「A通C上る」「B通A西入」「B通A東入」「C通A東入」。
うちがこのどれに当たるかというと、不動産屋の書類にあったのは2番目で、だから自分ではこれを住所として書いています。
ですが最近、もしかしたら3番目をのぞく全部正解で、どれを使ってもいいのではないかという気がしてきました。
少なくとも1番目が書かれた郵便物が来ますし、すぐ隣の一軒家のお宅にも1番目が書かれています。
3番目だけは通りの向かい側な気がしますが、4番目と5番目も自分の家にあてはまるような。
でもこれも間違っているかもしれません。
誰か教えてほしい。

南北を表す「上る」「下る」という言い方にも、まだ慣れていません。
「上る」をうっかり「のぼる」と言ってしまい、京都生まれの親に呆れられました。









ドゥニ・ヴィルヌーヴ『灼熱の魂』

最近DVDになったばかりのケベック映画『灼熱の魂』(2010、カナダ)を見ました。
ケベック映画といっても、冒頭をのぞいて大半の場面はレバノン。
内戦状態のレバノンを逃れカナダに移住した母親の死後、残された双子(息子と娘)が母の故郷へ渡り、その足跡をたどる旅を続けるという内容です。
現在と、母が生きた内戦時代(1970年頃から80年代半ば)が交差しますが、ムスリムの恋人と引き裂かれ村の恥呼ばわりされたキリスト教徒の母が、パレスチナゲリラやキリスト教右派が入り乱れ、いつ殺されてもおかしくない状況下をかいくぐって生き延びる描写はあまりに過酷。そして結末はさらに……。

原題はIncendiesで、自身もレバノンからカナダに移り住んだ劇作家、ワジディ・ムアワッドの戯曲『焼け焦げる魂』がもとになっているそうです。

この映画、今年の「フランス語圏の文化」の授業で、ケベックの回に見せようかとも思っているのですが、ただでさえ重めのラインナップがますます重みを増してしまうかなー。
それとも去年同様、もっとずっと肩の力を抜いて見られる『大いなる休暇』にしたほうがいいだろうか。
迷うところであります。




2012年5月9日水曜日

おしらせ:環カリブ文化研究会





512日土曜日、以下のような催しがあります。

タイトルは「『引揚者』文学の概念を拡張する」。



まったく素人ながらコメンテーターを引き受けてしまいましたが、

おりしもカミュの『異邦人』を読み返したところ。

これこそまさに、植民地アルジェリアからの引揚者によるフランス語文学でしょう。



昨年来、集英社の「戦争×文学」シリーズに挑戦しようと思いつつ、

いまだ果たせていないのが情けないばかり。

「概念を拡張する」ってところが気になるな。

土曜日は勉強します。



環カリブ文化研究会

512日(土)14001730

「『引揚者』文学の概念を拡張する」

発話者(発表順)

:杉浦清文(神戸大学他非常勤講師)

:原佑介(日本学術振興会特別研究員)

:朴裕河(韓国・世宗大学校)

コメンテータ  

:中村隆之(東京外国語大学研究員)

:大辻都(京都造形芸術大学)

:浜邦彦(早稲田大学)

司会:西成彦(立命館大学先端総合学術研究科)

会場:立命館大学 衣笠キャンパス 学而館2F 3研究会室

2012年5月8日火曜日

京都の銭湯

新しく借りた家のお風呂が狭くて、あまりリラックスできないので、時々銭湯に通っています。
東京の中心も銭湯が多いけれど、京都の町中にも多いと初めて知りました。
歩いて2分ぐらいのところに一軒あるので、気軽に行けます。

江戸のお風呂屋さんもなかなかいいですが、京都の銭湯もまた違った味わいでいい。
内部の作りは昭和前半をしのばせ、そうでありながらとても清潔。
色とりどりの楕円のタイルづかいは子供の頃、大好きでした。
壁面は富士山の代わりに、なぜかアルプスの山並み。
鏡にはひとつひとつ手書き風の広告がついていますが、年配のお客さんが多いせいか、
鍼灸院とかお茶屋とか渋い業種ばかりです。

番台からの「おおきに」の声も、京都の銭湯ならでは。
この前はおばちゃんだったので気づきませんでしたが、今日の番台はおじさん。
女湯に対してはカーテン越しにお金の受け渡しをします。
あまりの奥ゆかしさを新鮮に感じながら、そういえば江戸の風呂屋はどうだったかなと思い返してみましたが、脱衣所が見渡せる番台じたい最近見ない。
少なくとも、うちの近所の何軒かの銭湯では。

ところで今、銭湯業界は「テルマエ・ロマエ」一色。
ここぞとばかりにポスターを何枚も貼り、ブームにあやかろうとしているようです。
各巻5回ずつぐらい読んでいる私としては、ブームに乗せられ、一緒に応援したい所存です。


2012年5月7日月曜日

新生活

京都に来てひと月ほど経ちました。
今yoyo館は、室内にいても新緑のにおいでいっぱいです。
まだ荷解きも終わっていませんが、目下の関心事は金環日食をどこで見るか。
京都中の山々がのぞめる大学からとも考えたけど、ここは東側の高みから西を見渡す地形なんですよね。
やはり視界のひらけた鴨川べりでしょうか。
21日早朝。
二度目のガイダンス、そして読書会の翌日ですが、どんなことが体験できるのか、もう楽しみすぎます。
観察用メガネ付き『かがくる』、買わなくては!