2012年12月25日火曜日

喰って喰われて:太地にて

来年の授業プログラムに入れているというのにじつは最後まで読んでいない
メルヴィルの『白鯨』片手に、和歌山県の太地町を訪れました。
紀伊半島最南端にほど近い入り江にあり、
太平洋側にこんなところがと驚くほど美しく静かな町です。
それだけでなく、17世紀以来続いた古式捕鯨の本拠地ならではの
個性的な土地柄を感じさせます。
最近は捕鯨に強硬に反対するシーシェパードに糾弾され、
映画『ザ・コーヴ』の舞台ともなりました。
 
お客が入ってなんぼの鯨肉専門店に「Keep Out」の貼り紙がされてているのは、
正直ショックです。
つまりこの表現の意味が理解できる者は入るなと考えればいいのか。
私たちは一応理解できましたが敷居をまたぎ、
こんな物物しい貼り紙とは不似合いの穏やかなおばちゃんと世間話などしながら、
いくつかの品物を買いました。
 
くじら博物館では、ハナゴンドウ、コビレコンドウなど鯨たちに
手ずから餌をやることができます。
シシャモらしき小魚を「はいっ」と投げてやると、「もっとちょうだい」と
逆三角形のお口を開けて待っている。
ヒレを振ったり、尾っぽを振ったり、潮を吹いたりしながら。
とても可愛い。
 
そしてゴンドウクジラのこの可愛い尾っぽの刺身、オノミは正直とても美味しい。
 
鯨やら海豚やら、こんな可愛い動物を食べてはいけないという人々がいる。
では牛や豚は可愛くないのか?
牛も豚もシシャモも全部可愛い。
でも生態系を乱さぬ範囲で、他の動物の命をいただくのはいいと私は思います。
 
19世紀にはアメリカでもカナダでも捕鯨が盛んで、ペリーが黒船で日本に来たのは
捕鯨基地をもとめてのことだったのはよく知られていますが、
くじら博物館のアメリカの捕鯨コーナーをまわっていて、当時のアメリカ合衆国の
捕鯨船乗組員のほとんどがアフリカ系アメリカ人とカーボ・ヴェルデ人だったことを
知りました。
フィクションである『白鯨』の乗組員たちも大半が「野蛮人」ですが、
そんななかでNYの白人なのにみずから捕鯨船に乗り込んだメルヴィルって相当に
変わり者ですね。
 
 

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