2014年3月27日木曜日

読書の記憶

3月と4月、いやおうなく「年度」なるもので時間が切り分けられてゆく。
日々変化しかつ連続しているのに、そうでない気分にさせられてしまうことに抵抗を感じつつ、やはりいったん終了、そしてあらたな開始と考えている自分がいます。
束の間の時間、この二週間ほどの読書をあわてて備忘録として。

・柄谷行人『遊動論――柳田国男と山人』

これは熟読した。面白かった。発想のヒントになった~!
一か所だけ引用。
「小さいこと、あるいは、弱いことは、普遍的であることと背反しない。そのような考えが、
柳田国男の思想の核心にある」
ハイネの『流刑の神々』を読むこと、柳田の『先祖の話』と『「小さきもの」の思想』を読むこと。

・後藤明『南島の神話』
・池澤夏樹『ハワイイ紀行』 
・新井朋子『ハワイの神話――モオレロ・カヒコ』
・矢口祐人『ハワイとフラの歴史物語』
・近藤純夫『フラの花100』
・瀬戸みゆき『フラ事典2』
始まりの予感。

・フレイザー『初版 金枝篇』上・下
・フロイト『モーセと一神教』
・レヴィ=ストロース『アスディワル武勲詩』
・鈴木順子『シモーヌ・ヴェイユ 犠牲の思想』
ヴェイユ・サイクルの終わりに。

・リービ英雄『日本語を書く部屋』
・吉田敦彦『日本神話の源流』
・知里里惠編『アイヌ神謡集』

・岩城けい『さようなら、オレンジ』 読んでいる途中。
・柳田国男『山人論集成』 読み始めたところ。

日々、目が見えなくなっているのが問題です。

2014年2月25日火曜日

ソチ五輪総括


予想以上に充実した大会。備忘録として。

・おそるべき身軽さ、エアーの高さを見せつけた平野歩夢のスノーボード・ハーフパイプ演技。フロントサイド・ダブルコーク1080がすばらしかった。ショーン・ホワイトのもっとすごい演技を期待していたが、彼を超える日本人の少年が出てきたとは! スノボはオリンピック以外の大会をウォッチしていなければとバンクーバーの時も思い、結局不勉強のままで来たので、新鮮な驚きを得た。

・特筆する選手がいたわけではないものの、スノーボードはハーフパイプ以外にクロスも相変わらず予想不能で胸が躍り、すごく面白い。

・スキーのハーフパイプ。重要な面談に遅刻するギリギリまでテレビの前を離れず、わくわくしながら最後まで見たが、歯磨きの仕上げに一瞬洗面台に行った隙に肝心のデーヴィッド・ワイズの試合が終わってしまい、それだけ見そびれた。日本人が活躍しない試合なので二度と再放送はなく、失策。

・スキー・ジャンプ。全身金色の葛西の大ジャンプはひたすら痛快。小学生の時から応援していた女子ジャンプの星・高梨沙羅には次を期待。原田雅彦の解説がいい。原田より説教臭いのが鼻につくものの、荻原健司の複合の解説もテクニカルな面への言及がていねいなのは助かる。アルベールヴィル・リレハンメル・長野での現役世代が良質な解説者として活躍している。

・アイスダンスでは新鋭のロシアのカップル、イリニフ/カツァラポフの演技が若々しく、発見だった。デーヴィス/ホワイトもヴァーチュー/モイヤーも完成度は高いが、こういうボールルームダンス風なスタイルより、かつてのクリモワ/ポノマレンコのような抒情的な美しさを見たい。

・男子フィギュア。高橋大輔のジャンプ不調は無念だったが、長年、(勝手に)手塩にかけてきたカザフスタンのデニス・テンの銅メダル獲得はうれしい。全体での順位は下位ながら、ウズベキスタンのミーシャ・ジーも発見だった。コレオ・シークエンス、ステップ・シークエンスで見せる高橋タイプなので、テンのようにメダルをとれるようにはならないかもしれないが、存在そのものが魅力的。中央アジア勢ががんばっている。

私が言うまでもなく、羽生結弦の躍進はすばらしい。過去三年分の映像を見直してみて、この一年ちょっとの成長が著しいと感じた。高橋との世代交代にも見えるけれど、年末に怪我をする前の高橋の強さはただ者ではなかった。しかしやはり彼は「ガラスのエース」で、勝敗という意味ではタイミングが悪かった(でもビートルズ・メドレー、魅力的だった)。

・女子フィギュア。アデリーナ・ソトニコワの若さが炸裂するような演技はすばらしかった。そつなく完璧なキム・ヨナより私は魅了された。将来オリンピック強化部長まちがいなしというようなリプニツカヤより、キャラ的にも女番長風で好感が持てる。点数が高すぎるとかいう話はそうかもねとも思う。フィギュアでは面白い演技者と勝利者は一致しないものだから(ライサチェクとプルシェンコ、クリスティ・ヤマグチと伊藤みどりの時のように)。同じ意味で、浅田真央がショートでうまく行っていたとしても、銅メダルどまりぐらいだったろう。

浅田真央の演技は今思い出しても泣いてしまうほど感動的だった。自分のやりたい演技構成に職人のようにこだわりぬいてやり遂げたという意味で。もっと楽に得点を稼げるトリプルのコンビネーションを増やすような構成をこの人ならできるだろうとトリプルアクセル主義者である私ですら思ってしまった時期があったが、6種類の3回転ジャンプすべての着氷はすばらしい。コレオ/ステップシークエンスの質の高さ、みごとさもどの演技者をも越えており、胸を打たれた。

誰よりも難易度の高い頂に挑んで乗り越えたのが真の結果(キム・ヨナは同じ環境に身を置いてきた競技者としてその価値はわかっているはず)、今のISUの採点基準により6位にとどまったのが表面的な結果と私は考えている。

 

2014年2月21日金曜日

第2回日本フランス語圏文学研究会

3月6日(木)11時より、京都造形芸術大学NA409教室にて、
日本フランス語圏文学研究会の研究発表会を開催いたします。
http://www.kyoto-art.ac.jp/info/about/access/
来聴歓迎ですので、お近くの方はどうぞお運びください。

以下、プログラムです。

午前の部11:00~

開会の辞 立花英裕(会長・早稲田大学)

研究発表

「軌跡の詩学――インゴルドとグリッサンをめぐって」
工藤晋(都立南葛飾高校)

「エメ・セゼールとフランス語の生成――『帰郷ノート』を例に」
福島亮(早稲田大学)

午後の部14:00~

「エメ・セゼールにおける〈文化〉と〈レイシズム〉――その時代背景をめぐる予備的考察」 
立花英裕(早稲田大学)

「第二次世界大戦後のフランス領西アフリカ(AOF)――
コートジボワール作家ベルナール・バンラン・ダディエの体験と自伝的小説『クランビエ』から」
村田はるせ(アフリカ文学研究者)

「初期アルジェリア文学における世界観」
鵜戸聡(鹿児島大学)

「ニューヨーク1939‐1942――シモーヌ・ヴェイユとゾラ・ニール・ハーストン」 
大辻都(京都造形芸術大学)

16時頃、発表終了予定。

2014年1月8日水曜日

イベント「マリーズ・コンデ/グアドループの海岸から世界文学の深層へ」

1月13日(月祝)15時から、下北沢のブックカフェB&Bで、本の刊行記念イベントが
 
カリブ海のスライドなどもたくさん用意しましたので、お時間があればどうぞ参加してください。
(ウェブサイトでの申込みが必要です)
 
以下、B&Bウェブサイトからの転載です:
 
大辻都×小野正嗣×管啓次郎
「マリーズ・コンデ/ グアドループの海岸から世界文学の深層へ」
『渡りの文学』(法政大学出版局)刊行記念


カリブ海のフランス海外県、グアドループ。この美しい島出身のマリーズ・コンデは、
現代フランス語圏文学を代表する作家のひとりです。
彼女の文学の全体像を見わたす本格的な研究書『渡りの文学』の出版記念イベントとして、
著者の大辻都さん(京都造形芸術大学准教授)と小説家の小野正嗣さんに対談して
いただきます。

小野さんがパリ第8大学で博士号を取得した際の論文は、まさにマリーズ・コンデ論。
また、司会・進行を務める管啓次郎さんはコンデの『生命の樹』を翻訳しています。
カリブ海文学に関心をもつ3人のお話から世界文学の第一線が浮かび上がる、
刺激的な午後となることでしょう。

2014年1月6日月曜日

『いま、世界で読まれている105冊』

またさかのぼってのお知らせですが、日本未翻訳の世界中の文学作品を紹介するという
面白いコンセプトの本が発行され、私も執筆に参加しました。

タイトルは『いま、世界で読まれている105冊』(Ten-Books、2013年12月刊)

アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オセアニア……それこそ世界中の地域から
105冊が紹介されており、私はグアドループの作家、シモーヌ・シュヴァルツ=バルトの
『奇跡のテリュメに雨と風』について書いています。

できることなら翻訳もしてみたい、人気作家のマリーズ・コンデとはまた違った、神秘的な
味わいをもつ、大好きな作品です。

2014年1月5日日曜日

『渡りの文学』刊行のお知らせ

 

 
明けましておめでとうございます。
2013年12月に著書を刊行しました。手にとっていただけると、うれしいです。
今年も文学を通し、近くや遠くの世界のことを考え続けたいと思っています。
 
大辻都『渡りの文学 カリブ海のフランス語作家、マリーズ・コンデを読む』
(法政大学出版局)  
                       
以下、目次です:

序章 マリーズ・コンデとは誰か?

第I部 カリブ海、言葉の胎動

第1章 被植民者による諸理論の変遷とその後景
一 セゼールとネグリチュード
二 クレオール性とは何か?

第2章 書かれること/書くこと──表象としてのカリブ女性から女性作家へ
一 植民者と「黒人」の出会い──恐怖から接近へ
二 ドゥドゥイスム──クレオール女性の表象
三 ヨーロッパ人作家が描く「黒人」女性像──『ウーリカ』『ユーマ』「ボアテル」

第3章 カリブ海の女性作家誕生
一 戦間期とヴィシー政権下──S・ラカスカード、S・セゼール
二 一九六〇年代:カリブ女性の日記文学と病理──ミシェル・ラクロジル
三 一九七〇年代:クレオール世界のアレゴリー──シモーヌ・シュヴァルツ=バルト

第II部 マリーズ・コンデを読む

第1章 マリーズ・コンデと「アフリカ」──『ヘレマコノン』をめぐって
一 『ヘレマコノン』とその背景── 一九六〇年代初頭のアフリカ独立国家
二 セゼールからファノンへ──コンデと「アフリカ」を結ぶふたりの作家
三 大文字の「アフリカ」はあるのか
四 隔てる時間と集団的記憶

第2章 非‐マロン文学としてのカリブ海文学──『わたしは魔女ティチューバ』
一 アフリカからアメリカへ──新たな自伝
二 マロナージュと母子関係──トニ・モリソン『ビラヴィド』と『わたしは魔女ティチューバ』
三 語りとしての滑稽叙事詩と非‐英雄たちの共生

第3章 アフリカ‐アメリカ‐カリブ海──『最後の預言王たち』
一 ふたたび「アフリカ」──非‐英雄スペロの起源探索
二 アメリカのカリビアン
三 カリブの母の系譜
四 アメリカ/カリブのアナンシ的ネットワーク

第4章 蜘蛛の巣化する一族──『悪辣な生』
一 カリブ海の歴史とある家族の「滑稽叙事詩」
二 個人の記憶、集団の記憶
三 世界の周縁としてのカリブ海ディアスポラ

第5章 アンチ・ヒーローと名前──コンデ作品のカリブ世界創造:『マングローヴ渡り』『移り住む心』(前)
一 英語文学の書き換えとグアドループへの移植
二 他所者のいる共同体
三 奇妙な名──クレオールの魔術空間

第6章 微弱なポリフォニー──コンデ作品のカリブ世界創造:『マングローヴ渡り』『移り住む心』(後)
一 複数化する乳母(マボ)たち
二 コンデの「姉」リースの多層的批判
三 マングローヴを生きる──シャモワゾーとの対話

終章 世界の網としてのカリブ海

 註記
 あとがき
 附録3 マリーズ・コンデ個人年譜
 附録2 カリブ海の女性文学史
 附録1 カリブ海のフランス植民地史概略
 参考文献一覧
 索引




 

2013年11月15日金曜日

名作一気読み

自分のための読書時間がめっきり減っているのが悩みの種ですが、
代わりというか、いっそ授業準備をインプットの機会にしてしまおうと考える今日この頃です。

フォークナー「熊」、古川日出男『馬たちよ、それでも光は無垢で』、和合亮一「詩の礫」、
川上弘美『蛇を踏む』、多和田葉子『犬婿入り』。
これがひとグループ。

フアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』、目取真俊「水滴」「面影と連れて」、安部公房
「変形の記録」、伊藤比呂美『日本ノ霊異ナ話』、景戒『日本霊異記』。
これでひとグループ。

カフカ『アメリカ(失踪者)』、ストローブ=ユイレ「階級関係(アメリカ)」、多和田葉子
『容疑者の夜行列車』『旅をする裸の眼』、ラフカディオ・ハーン「チータ」。
これでひとグループ。

最近とみに短期記憶と集中力が衰えている身に、これら全部まとめて熟読・把握するのは
もはや毎度のこととは言え、きつい。
しかし、われながらいい並びだと思います。
聞いたらお得だよと心から言えます。
そして一気読み(観・聴き)した私も得しました。